『黒い手帖』を読みました

松本清張の随筆『黒い手帖』を読みました〜。

黒い手帖 (中公文庫)
黒い手帖 (中公文庫)
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松本 清張
中央公論新社
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ユルい連載での文を集めた文庫だったんで、あんまり期待してなかったんですけれども、いやーさすが…読んでるうちにちょっと面白くなっちゃいました。

松本清張と言えばなにを挙げるべきでしょうかねえ?『点と線』か『砂の器』か『日本の黒い霧』か、まあその辺りはとっくに読んだ上でなにか短編挙げたりするとか、流行作家だからもうね、今からなにかを読もうとすると焦りますね、確実に。私は大昔に挙げた3作品を読んだはずなんですが…すっかり忘れました。

そうそう、すっかり忘れたっていうのは冗談で、森達也さんの『下山事件』でも思い出してたんですよ、松本清張。なにしろ下山事件についてもやいのやいのと言うのが流行ってたのが昭和30年代ですからねえ。この文庫にも私が生まれる以前のなんやかやの事件についてが書かれてて、これがまた超楽しいんですね。たとえば小松川女高生殺人事件。柏木の若妻殺し事件。三鷹ピストル事件。スチュワーデス殺し事件。これらの事件についてあれやこれやと、まあブログ的な文章というか、気さくにいろいろ書いているって言うわけです。

しかし、なにからなにまで昭和ですなあ清張先生は。当たり前か。

あと、文章作法というか小説作法についての読み物もいくつかあって、ちょっと説得力ありました。歴史小説の定義は置いといて、その意味についての、先生の考えってのは、ムーンと鼻息を荒くして読んでしまいました。どんな感じかというと…

鴎外流に史実を克明に淡々と漢語まじりに書くのが「風格のある」歴史小説ではない。史実の下層に埋没している人間を発掘することが、歴史小説家の仕事であろう。

そんなこと言って、結構難しい漢語使っていらっしゃいますやんかー、みたいな。