『無宿人別帳』を読みました

松本清張の『無宿人別帳』を読みました〜。

無宿人別帳 (文春文庫)
松本 清張
文藝春秋
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私は松本清張なんて今さら読むガラじゃないんですけど、好きな時代物の短編集ってこともあるし、実は『黒い手帖』って随筆を読んでて読みたくなったのがこの本です。石川島、佐渡金山、八丈島などの場所と、江戸時代の無宿人や牢人を絡めた短編が全部で10もあるのでお得感ありました。

大変楽しめました。というのも、『村からみた日本史』を読んだばかりで、歴史モノとしてはいろんな点で噛み合ってない(かもしれない)部分を感じることができたってのがひとつ、そして史実との齟齬以上に、何としてでも自分の物語にしてしまう清張先生の手練手管を感じられたってのがひとつでして、もしかしたら私はかなり理想的な順番でこの二つの本を読んだかもしれません。「江戸時代」は、昭和と平成でも変化し続けているわけですね。合わせて読むことをオススメします。そういえばどちらも「佐渡年代記」という古書を底本にしている部分が出てきましてねえ、両者の目の付け方が異なってて面白かったですよ。

江戸時代の小伝馬町の牢屋の描写は、飯嶋和一さんの『雷電本紀』でもありました。本書でも繰り返し登場し、しかもかなり精緻な描写です。まあ今となってはいろんな時代物に出てくる描写ですが、まあホントに、いやなもんですね牢屋って。何がいやかって、いじめがあってそれを黙認してるっていう慣習が役人の側にあったってことが気に食わないわけです。これって、現代の学校や部活動や新人研修とかで行われていることも黙認されうるという典型というか原型じゃないですかねえ。

それぞれ、どっかで見たり聞いたりした話だな…と思って読んでたんですが、なんとこの短編集、映画やテレビドラマ、歌舞伎にもなってたんですね、なんという清張ブーム! ちょっと呆れますね、お話としてはそれぞれ50年後の今に生きる人にとっては。だからといって司馬ブーム、藤沢ブームも、後世から見たらどう映るのか、分かりませんけどね。