『WWE ECW ライズ・アンド・フォール』を観ました

WWE ECW ライズ・アンド・フォール』を観ました〜。

私たちは歴史に学ばなければならないとか、よく慣用句的に言われますけれども、歴史という言葉が指す概念も実はいろいろありましてね、っていう話です。どこの言語だったかすっかり忘れましたけど、時制がとても細かく分かれている言語がありまして、例えば未来形でも、この後すぐ、今日中に、2〜3日後に、近い将来に、ずっと未来に、という風に分けているそうなんですね。これそのまま過去も分けることができると思うんですが、昨日や先月や昨年の話というのは子供でも感覚的に分かるとして、これが10年、20年という単位になると、自分自身が年を喰ってみないと分からない感覚というのがあります。十年一昔とはよく言ったもんですな。

このDVDは、ECWというプロレス団体の始まりから終わりまで、つまり1992年から2001年までをマルっと特集しています。2005年あたりに発売されたDVDです。ECWはアメリカでも日本でも大変人気のあったプロレス団体なので、好きな人はもうとっくの昔に観ているし、興味のない人は今後も観ることないであろうDVDでして、いまこの2011年のタイミングで観ている自分は、かなり中途半端なファンであるということになりますねホントに。ただ、あえて強弁しますけれども、もし「90年代のプロレス」を知るなら、そして20年後、100年後に「プロレスとは何だったのか」を伝えるなら、このDVD一枚で事足りると言えましょう。それくらいこのDVDは金字塔的な作品です。

なんせECW崩壊後、10年経つというのに、ECWチャントはまだまだ続いているし、ECWの系譜にあると見られるビッグイベントもほぼ毎年行われております。One Night StandだとかHardcore Justiceとか、全部が面白い試合ばかりではなくてしょっぱい試合もあるってのは、今だからっていうわけではなくて、当時から変わらないはずなんですけど、ここまで「ECW的な何か」が熱望されるのは、ECWがプロレスの理想形だったからではないでしょうかねえ。

2枚組でたっぷり3時間はあるDVDですが、やっぱり一番いいのはタズが語るポール・ヘイマンについて。思わず貰い泣きしてしまういいお話でした。ポール・ヘイマン一人が作った、ECWはポール・ヘイマンの人生そのものであった、とタズはここで断言します。ポール・ヘイマンの創造性に富むプロレス頭はもちろん素晴らしいんでしょうけど、業界のタブーを少しずつ破ってきた功績は他のプロレス業界人とは並べられないほどです。ポール・ヘイマンのしてきたことは、今では取り返しのつかないことをしたのかもしれないと見る向きもありますが、しかし時代の要請というものだったんでしょう。90年代のプロレスは「タブー破り」が主題だったのかもしれませんね。

そして歴史は繰り返す。んでしょうかどうなんでしょう、プロレスに関してはこのところさっぱり分かりませんが。そういえば歴史は繰り返す、この言葉も慣用句的に使われるんですけどね、実感として分かるのはおっさんになってからなんですよね。でもおっさんになってから分かっても時すでに遅し、ってことかもしれませんね。