『奇人たちの晩餐会 USA』を観ました

ジェイ・ローチ監督の『奇人たちの晩餐会 USA』を観ました〜。

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私の映画のツボってのは、乱暴に言えば大体アメリカ映画のコメディ要素、となるのかも知れないです。別にコメディ映画だけが映画ではないと思っているし、当然ヒトの好みはいろいろあるので何かコメディについて力んで話そうとしてもうまくいかない方が多いんですが、2010年の本作品は、このところのコメディ好きな私の映画のツボの根幹を刺激するような、非常に重要な作品であったと思います。私の好きなこの辺のコメディ周りの集大成、と言うほどではないんですが、Up to Dateな現在進行形の流れを感じました。映画は常に進化しているんだなと、だから新しい映画を見続けなければならないな、と改めて思った次第です。

なにしろ素晴らしいキャスティング。個人的にお馴染みの役者だけでも何人か揃っているし、初めて見る役者もとても面白いし素敵なんですね。どのくらい書けるか分かりませんがとりあえず一人ずつ印象を書き残してみます。それくらいこの映画のキャスティングは、全員が重要に思えるものでしたんで。

まずポール・ラッドがとても良くなってました。これまで私が観た中では一番いいと思います。『童貞男』や『ニュースキャスター』などのアパトー関連作では、スティーヴ・カレルと並ぶコメディ駒として扱われていたんですが、なにしろカレルの巧さと個性が半端ないため、共演してもポール・ラッドがまずく見えちゃっていたことに気付かされます。『奉仕活動』ではメインを張ってたんですが、やはり大きなボケをやらせるとイケメンが邪魔をしてしまう、という印象がありました。わかりやすく言うとポール・ラッドは、我が家の坪倉なんですね。はっちゃけた若者の役やどんどん前に出ようとするコメディは、彼の本意ではなく、むしろ本作品のような、スーツを着たきちんとしたヒトという設定で、キャラを存分に活かていたという。これはやっぱり年齢を重ねたせいもあるんでしょうね。

ほとんどのコメディ含みのシーンでは、スティーブ・カレルが発火点となって回している様子でしたが、安心して見られるお笑いクオリティに加えて、なんていうのか人間力というのが備わってきて、ますます大物俳優になっている気がします。ポール・ラッドとの絡み具合は、何度か共演しているだけにバッチリでした。ネルソン・マンデラのことをずっと「モーガン・フリーマン」と言ってたのには、どこかで『エバン・オールマイティ』のことが意識にあったのかなとか思ったり。

そしてカレルとの絡みで言えば、カレルと同じ職場で働くザック・ガリフィアナキスとの読心術コメディも素晴らしかった。『ハングオーバー!!』での痛々しいヒゲデブキャラの強い印象から、私もやっと脱することができました。特に晩餐会シーンでのカレルとの存分な絡みでは、彼の真の持ち味を垣間見ることができます。コメディを知るスティーヴ・カレルポール・ラッドの2人が、彼の魅力を引き出した、と言えるのかもしれません。

初見だったジェマイン・クレメントの演じる「動物的な芸術家」も素晴らしかったです。かなり下らないキャラで、そして下らないシチュエーションも難なくこなし、随所で目立っておりました。

コメディをやらかしたら、昔のストーカー女役のルーシー・パンチ、本作でもっとも目立って美味しかったんじゃないでしょうか。毒のような強烈なキャラでした。同様に他のコメディエンヌ、「6階」のコールスローの助手クリステン・シャールも、晩餐会で動物の霊を読む奇人を演じたオクタヴィア・スペンサーも、それぞれ恐れいりました。このようにまったく初見のオモロイ人たちに本作で出会えたってのは、実に鮮烈でした。

ポール・ラッドの彼女、ヒロイン役のステファニー・ショスタク。ナイス配役ですね〜。コメディの中でも清潔な感じを醸し出す雰囲気のあるいい女優さんです。スイスの金持ちミューラー夫妻を演じたのはデヴィッド・ウォリアムスとルーシー・ダヴェンポート。もう絵がピッタリです。しかも絵がバカバカしいんですよね。「7階」の勝ち組連中、社長のブルース・グリーンウッドとその取り巻きのロン・リビングストンとラリー・ウィルモア。晩餐会に誘うムチャぶりの緊張感ある会話あたりの絡みはもう少し見たかった〜。他にも晩餐会の面々など端役も万全な態勢で、サッカーで言うなら南米ではなくヨーロッパスタイルで笑わせに来ています。これは見事でした。

話題はこのキャスティングだけに終始してますが、実際は絵やお話の作りこみも素晴らしく、中でもネズミの剥製で作るセットの可愛らしさが、映画全体に重要な意味を与えていたことは否めません。そしてジョン・レノンの「You may say I'm a dreamer. But I'm not the only one.」、まあベタですけどね〜これ自体は。ただ最後にはシックリ来る言葉だな、と思ってしまいました、恥ずかしながらw。