『Mr.ズーキーパーの婚活動物園』を観ました

フランク・コラチ監督の『Mr.ズーキーパーの婚活動物園』を観ました〜。

「動物がしゃべる映画」です。動物をふんだんに使ったから間違いなく売れます、という前提で制作されたから、きっと余裕があったんでしょうか、いつものハッピーマディソンの作品よりも安定感があり、結構ずっしりした見応えを感じました。

主演はケヴィン・ジェームズ、これもしかして初主演? アダム・サンドラー出演作では、ニック・スウォードソンとともに活躍している大番頭です。アダムが志村けんだとしたら、ニックは上島竜兵、ケヴィンは肥後って位置でしょうか。ニックの主演が『ポルノスターへの道』というド下劣作品だったことに比べると、ケヴィン主演の本作は随分とまともな…というよりは普通に良作と言えるものでした。振り返ってみたら『チャックとラリー おかしな偽装結婚』でも『アダルトボーイズ青春白書』でも、ケヴィンは比較的クリーンな役どころだったので、その路線の延長線上に本作があるのだと思います。

ケヴィンが演じるズーキーパー、動物園の飼育係は、どうやって見てもクリーンそのもの。冒頭のプロポーズのシーンでキレイにフラレるところから始まり、ラストもキレイに締まっています。動物たちには好かれるし、パーティでも面白いジョークを言うし、車のディーラーになってもきちんと車を売るし、正義感はあるし、同僚に惚れられるし、こんな役柄を仮にイケメンのアダム・サンドラーが演じていたら、なんかイヤーな気分になっていたと思いますが、ケヴィンのようなモテナソーな体型の男がやってるから好感が持てるというワケです。

冒頭のプロポーズのシーンがかっこよくて、海岸を馬で走り「あれ、なんかあるよ」と流れ着いたボトルを指す、それを女が見ると中に紙が入っている、読んでみると「私はあなたと結婚したいです」とかなんとか書かれている、そこで男が指輪を出してプロポーズする…この流れって、もしかしたら何かパクリ元があるのかもしれません。で女は、女ってのはレスリー・ビブなんですが、そのプロポーズを断る、断ったにもかかわらずマリアッチのバンドが演奏をしにくる…、ここで笑わせておいて、最後の方にこの流れの天丼が待ってるんですよねえ。これひとつだけで、ああいい脚本なんだな、と感じました。

動物園の動物たちがしゃべりだした時には、「ええ…クソ映画?」と焦ってしまいました。アニメ以外に動物がしゃべる映画なんてほとんど見たことがないので比べようがないですが、本作が「動物がしゃべる実写映画」の最新バージョンであることは間違いないです。ものすごーく流暢な英語を動物が話すんですよ、信じられますか。『宇宙人ポール』が流暢なアメリカ英語をしゃべること以上に、設定としては信じられない、バカにすんなと。しかし、これ不思議なことに、見ているうちに馴れるし、次第に動物たちの会話シーンが楽しくなってきちゃうんです。映像の加工がよく出来てて、動物がパクパク口動かしている絵に声を当てているだけの「トム&ジェリー」のような映像とはワケが違う。そんな映像はすでに20世紀の遺物だと言わんばかりで、動物が普通に英語をしゃべっています。「動物がしゃべる映画」のハードルをグッと上げやがったその技術がすごい。こういうの見ていつも思っちゃうのが、今は技術の進歩でいろんなことが可能なんすねえ〜。動物使いが過ぎた感のある『エヴァン・オールマイティ』以上に驚きました。

尺稼ぎの常道である「楽しい夜遊び」、「激しいカーチェイス」の、それぞれの絵も楽しそうでなにより。カーチェイス要素は自転車で、クラビング要素はゴリラとステーキ屋で騒ぎ放題。いずれもオリジナリティのある絵でなによりでした。音楽使いも気に入っています。結婚式パーティーでの「俺と彼女の曲だ」と言ったバリー・ホワイト、カーテンにぶら下がった時のコモドアーズ、いい選曲です。特にコモドアーズの「Easy」の流れは、ワシの習性についてのウンチクとともに、心に刻まれた名シーンでした。そしてワシの習性のウンチクも最後に活用するいい脚本。「渋滞する中でキスする映画」としても心に残りました。

クレジット見ると、動物たちの声の出演が豪華で、本気度がうかがえます。牡ライオンがシルヴェスター・スタローン、サルがアダム・サンドラー、どういうわけだか、ジャド・アパトーまで象の声で出演しています。準主役と呼んでいいのか、ゴリラの声はニック・ノルティ、そりゃ渋いはずですね声が。あと『ハングオーバー!!』でおなじみケン・チョンは、爬虫類専門の飼育員役。ケン・チョン先生は、今回も身悶えほど面白かったなあ…。ハリウッドのアジア系コメディアンとしては悲願であるケン・チョン主演の映画、早く出て欲しいなと思います。